2005年10月11日

昔のこと16


消えた男を追う彼女。
懸命に連絡を試みる。

しかし。

携帯にも
メールにも

反応がない。

日を追うごとに高まる不安と
膨らむ下腹部。

ついに彼女は決断を下す。

そう、男の会社に乗り込むのだ。

覚悟を決めて、受付で男の名を告げる。

待つこと5分。
観念したのか、男はすぐに姿を現した。


「お待たせしました」

「えっ・・」

開いた口が塞がらないとはまさに。

男の顔は、彼女の愛した人間とは
似ても似つかぬ全くの別人だったのだ。

「ふーん」
「やっぱりそうか…」

事情を知るのか、男はさほど驚くわけでもない。

「最近ちょくちょくあるとは聞いていたけど…」

男が言うには、この会社の名刺を使い、
赤の他人が社員を偽って悪さをしているのだという。


「は…?」

彼女の愛した男は、
そして、
お腹の子の父親は、
実は存在しなかった…

「バタッ」

その場に崩れ落ちる彼女。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あちゃー。聞いてねーぞまったく」

「スマンスマン」

もう一人、男が姿を現した。

その男こそ。

彼女が捜し求めた男だった。


posted by andycandy at 00:34 | Comment(1) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年10月09日

昔のこと15


彼女には、将来を誓い合った男が居た…

はずだったのだ。


某商社勤務にてルックスも良い。
そんな男が傍らに居た…

はずだったのだ。


付き合って約2年が過ぎたころ、
彼女は自分の異変に気付く。

そう、男との間に子を授かったのだった。
男は三十路を越えていた。
結婚するかどうかは、彼女の考え次第…

のはずだったのだ。


男に妊娠を告げる彼女。

男の喜ぶ顔が見れるとばかり思っていた彼女に、

男の言葉が突き刺さる。

「オレにも子どもが居る。もうすぐ4歳と2歳になる」

追い討ちをかけるように、男は言葉を継ぐ。

「もちろん妻も、な」


呆然とする彼女。
眼前で何が起きているのか理解できない。


「だから」
「産んでもらうわけにはいかない」


「あとで」
「金を振り込んでおく。それであとのことは」
「処理しておいてくれ」


「もう会うこともないだろう」


そして男は姿を消した。




posted by andycandy at 14:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年10月02日

昔のこと14


それが彼女を見た最後だった。


結局、何も起こることはなく、
単に睡眠不足なオレだけがその場に残された。

意味が分からないが、睡魔には勝てず、
そのまま意識を失った。

______________

「テッテケテケテケテッテッテー…」
当時着メロに設定していた、NHK「きょうの料理」の
オープニングテーマが鳴り響く。

「…あ、あーっもしもし…」
「今ドコにいる?」

いきなりの電話で安眠を妨害しやがって。誰だ?

「あ、あーっと寝てる」
「ハァ?もう15時だよ」

ぐげげ。いちにちが睡眠で終わろうとしている。

電話の主は、大学時代からの腐れ縁の女子だった。
男女の関係というわけではなく、
なんだかんだで年に数回は顔を合わせる程度の仲なのだが。



「あのさぁ」

こちらの状況などお構い無しに、話が続く。

「アンタのとこに、懐かしい人間から連絡来なかった?」

「うーん、誰だろ」

あまりにもわざとらしい。声が心なしか裏返る。
大根役者っぷりを遺憾なく発揮。

「ははっ。やっぱ来たんだね」
「だとしたらどうする」

「え、彼女からさー、私んとこに電話がきて、
 アンタの連絡先聞いてったからさ」

犯人はお前か。


「ごめんねー。なんか声がマジだったんだよね」
「てめえ。勝手なことしやがって」

「ゴメンゴメン。でもさー、電話くらいいいじゃん。
 話くらいしてもいいでしょ。あんなに好き…」
「うるせぇ。もう昔のことだ。それに」
「それに?」
「住所まで教えやがって馬鹿が」

「え?」

明らかに変わる声の色。
動揺というよりも呆然と言った方がしっくりくる、
そんな変化が耳から伝わってきた。

「え、じゃねーだろ。まったく」

「まさか」
「ああ」
「まさか家まで現れたの?」
「ああ」
「な、なんで…」

「お前が」
「言ったからだろ」

と言葉をここまで継いでみてふと気付く。
こいつはオレの住所を知っているはずがない・・・・?

「私アンタの住所聞いたことないわよ」
「そう、だよな」

「確かに彼女に住所も聞かれたけど」
「『それは言えないなー」って含みをもたせといた」

「また余計なことを」

「だってさー」
「いきなり電話してきて『電話と住所を教えろ』ってのはナシじゃない?」

教えてしまうお前もナシだと思うが。

「だからちょっと」
「イジワルしてみた」

分からん・・・。

「で、結局」
「教えたのは電話だけなんだな?」

「そうそう。でもどうやって家に…」
「しらねーけど、それだけ情報があれば、
 いくらでも住所なんて分かるだろ」

印鑑でも偽造して、住民票を取ってしまえば、
いくらでも移転先など分かってしまう。
おそらく、先に住所を調べた上で、
ヤツに電話を聞いてきたのだろう。

探偵か、お前は。


「ふーん。そうなんだ。なんだかこわいねえ」
「…泣いていたよ。理由は知らない」

「ちょっと聞いてみようか?事情を知ってそうなヒトに」

止めろ、とはいえなかった。
知る権利はオレにもあるだろうと思った。

「ああ頼むわ。オレんとこにきたとか
 余計なことは言うなよ」
「分かってるって。じゃ、またあとで」

そこまでしてオレの許へ現れ、
何も語らずに去って行った彼女。

そして明らかになる真実。
彼女の抱える闇は、我々の想像を超えていた。
posted by andycandy at 21:45 | Comment(5) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月19日

悲しみは雪のように・前編

深夜2時過ぎの電話。
このタイミングで鳴る電話には、ロクなことがない。

例によって、
今回もその通りだった。


「もしもし」
「あーオレだけど。こないだはおもろかったな」

先日帰省した際に一緒に飲んだ旧友からの電話だった。

新婚間もない彼が、こんな時間に電話とは珍しい。



「どーした。もしかして、生まれちゃった?」


その飲み会の席で、彼は新妻の妊娠をカミングアウト。
ちょうど現在妊娠8ヶ月の安定期にさしかかったあたりで、
年内には父親となるとのことだった。

私自身、早産により予定日より1ヶ月早く
この世に生を受けていたこともあり、
もしかしたら彼の第一子も早産だったりしてな…と
軽くツッコんでみたのだった。


「・・・・・」

返事がない。

「…あー、さすがにまだ生まれてないよなー。ハハハ」
「生まれたんだ」

「へ?」
「正確には」



「出てきただけだったけど」



意味がわからなかった。


「どういうこと・・・・」
「ただの肉塊になっちまったってことさ」


ますます意味がわからない。


「え・・?だって妊娠8ヶ月で流産はあり得ないだろ」

「オレにもわけがわからないよ」

posted by andycandy at 20:10 | Comment(2) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

昔のこと:お知らせ


いつの間にか長編となってしまった

「昔のこと」シリーズですが、

反響も少なくなりましたので、

これにていったん閉幕ということで。

ご愛読ありがとうございました。


posted by andycandy at 18:51 | Comment(4) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月18日

昔のことFAQ


Q1 いつの話ですか?
 
A1 数年前です。


Q2 彼女は誰ですか?

A2 それは明かす必要もないし、明かすつもりもないですね。


Q3 あと何回くらい続くんですか?

A3 検討中です。もうちょいで終わるんじゃないかな。


Q4 本人が見たらまずくないですか?

A4 その辺は少しデフォルメしてありますから、問題ないと思います。


Q5 こんなネタ書いてると、婚期がますます遠ざかるのでは?

A5 余計なお世話です。でも、痛いツッコミですね。子どもは欲しいんですけどねぇ。
  こればっかりは相手がいないと。


Q6 ところで、合コン好きの新郎って誰ですか?

A6 えっ…守秘義務がありますので、勘弁してください。


Q7 好みの女性のタイプを教えてください。

A7 プライベートな質問は広報を通してください。ポニーテールは素敵だと思います。


Q8 今年のクリスマスはどうするんですか?

A8 話題が飛ぶなあ・・・。プライベートな質問は・・・。ここ数年恒例となった、
  「聖夜のビール祭り」にて荒くれダメ人間たちと飲んだくれるのではないかと。
  ホテルディナー?そんなもんやったことねぇよ!


Q9 最後に一言お願いします。
A9 「昔のこと」は別シリーズが始まる予定です。そちらもよろしくお願いします。
posted by andycandy at 11:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

昔のこと13


眼つきが豹変した。

重い重い空気が、その場を支配していた。


「そうやって」
「みんな」
「私から」


「離れていくのね」

大粒の涙。

それ以上の言葉は残さず、背中を向けた彼女。
それは、彼女なりの、最後のプライドだったのか。

今にして思えば。


そしてその翌日。

私は驚愕の真実を知ることとなる。
posted by andycandy at 11:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月17日

昔のこと12


様子が尋常ではない。

顔色も、眼つきも、
あのとき好きだった、
彼女の面影はなく。

ただならぬ形相の女性が、
そこに立っていた。


「どおりで。待っても出てこないわけよね」

脳内ストーリーが着々と進行しているようだ。


説明するのも面倒だ。
それに。
彼女は何かがおかしい。


急にオレを訪ねてきたところからして変だし、
夜通しここにずっといたことも異常だ。

そして何より。
眼前の女性は、俺の知ってる彼女じゃない。

もっと可憐で。
もっと綺麗で。
神々しくさえあったはずなのに。

想い出は想い出のまま抱いていくべき代物…
誰かの言葉が、そっと胸に去来する。


「そういうことだから。帰りな」

自分でもぞっとするくらい冷たい声が、
喉の奥からスルリと飛び出した。


posted by andycandy at 18:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月15日

昔のこと11

呆気にとられるオレを尻目に、
女は救世主を見るかの如きまなざしをオレに向ける。

「助かったー。ラッキーやわ」

どうやら、鍵をどこかに忘れたか落としたかして、
オートロックから中に入れなくなっていたようだ。

「あんちゃん、助かったわ。ええ男やね」

明らかに世辞と分かる棒読みながら、女は謝辞を述べ
中へスルリと入っていった。オレの推定によれば、
水商売朝帰り系だな・・・

と、そんなことはどうでもいい。

彼女はどこへ消えたのだ。
さすがに、帰ってしまったのだろうか。

それならそれで、よかった。

どう対処すべきか考えあぐねた挙句に、
寝てしまった自分。

目が覚めてしまえば、すべては幻と消えていた、
そう納得すべきなのだろう。



が。




「あれが今の彼女なの?」

オレの長い夜は、まだ明けそうになかった。
posted by andycandy at 14:10 | Comment(2) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

昔のこと10


「?」

見慣れない女がそこに居た。

居るはずの彼女の姿は無かった。
訳が分からない。
posted by andycandy at 02:16 | Comment(3) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月13日

昔のこと9

不覚にも眠ってしまったようだ。



時計に目をやる。。。既に5時を回っている。
…自分の置かれた状況を思い出してみる。

何がどうなっていたんだっけ・・・


そうだ、彼女が玄関に!


あの突然の訪問が夢であってくれれば。
そんな切なる願いを抱え、玄関へ急ぐ。

果たして、彼女はそこに居た。
posted by andycandy at 18:45 | Comment(5) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

昔のこと8



・・・目が覚めた。
posted by andycandy at 01:01 | Comment(6) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月12日

昔のこと7


玄関を開ければ、そこに彼女がいる…。

一度は言葉にならないほどの想いを寄せた女性。
なれど、思い出したくもない仕打ちをした女性でもある。

私の選択肢は


1、相手をしない。全く応対をせず携帯にも出ない。相手があきらめて帰るのを待つ。

2、インターホン越しに会話。話をつけて帰す。

3、玄関で相手の目的を聞き、状況を把握する。

4、部屋に入れる。あとは野となれ山となれ。


といったところか。

この場合、どう動くのが正しいのだろうか。
正解などないのかもしれない。
ただ、こちらには圧倒的に情報が少ない。

1を選択しても、結局解決にならない可能性が残る。
ふいに湧き上がった胸のモヤモヤが消えてくれないだろう。

3を選んだ場合、なし崩し的に4になってしまう恐れが強い。
直接会ってしまえば、想定外の事態も考慮せねばなるまい。

結局、我ながら冷静に2を選択した私は、
少し身構えつつインターホンの受話器を手に取った。

「どうしてここが分かったんだ」

聞く順番を間違えている。相手の目的を把握することこそが
至上命題だというのに。
冷静なつもりでも、実はテンパってる自分がそこには居た。

「どうでもいいじゃない、そんなこと」

案の定、答えにならない返答がきた。

「もうオレと君とは何の関係もないはずだろ」
「いきなり深夜に、会いに来た、って言われてもな」

本当に聞きたいことは別にあるはずなのに、
無関心を決めこむ。

「ふふ。ずいぶん冷たいのね。でも」

「相変わらず嘘が下手ね」

「声が震えてるんじゃない?」

すべてお見通しというわけか。

「いつまでここで待たせる気?寒いんだけど」


明らかに劣勢である。相手のペースに引き込まれている。
オレは昔とちっとも変わっていないのか。
振り回されるだけ振り回されて、あとには何も残らないのか。


それは嫌だ。


「何しにきたんだよ」

精一杯声を振り絞る。

「だ・か・ら。会いに来たって言ってるでしょ」

「どうしてオレに会いに来るんだよ」

「説明の必要はないでしょ」

「なんでだよ」

「私が会いたくて、もちろんアナタは私に会いたい。
 それだけのことじゃないの」

ハッと我に返った。
すごい理屈だ。すごい決め付けだ。もちろん、全否定もできないわけだが。

「帰れ」
「帰ってくれ」

「素直じゃないのね」

「少し待たせてもらおっかな。寒いけど」

次の一手が全く読めない、午前2時。
posted by andycandy at 03:39 | Comment(1) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月11日

昔のこと6

「な、何言ってんだよ」

動揺を隠しようもない。

「そうやって人をからかうのはやめろ」
「ふふふ」
「もっとうまい嘘をつけよ」

向こうのペースに乗せられてはならない。
落ち着けオレ。


「フフフ…部屋の灯りと、それに換気扇が動いてるじゃない」
「な・・・」
「部屋にいるんでしょ」


「ど、どうして…」

彼女に自室の位置を教えた覚えはない。
ずっと連絡すら取っていなかったのだから。
どういうことなんだ。


「あなたに…会いにきたの」


ピンポーン。
静寂を破る玄関のチャイムが、
嵐の幕開けを告げていた。


posted by andycandy at 14:03 | Comment(1) | TrackBack(1) | あの日のデキゴト

2005年09月10日

昔のこと5

・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・


長い長い沈黙。

「フフフ」
「・・・・・・」


「私ね、」









「今あなたの家の前にいるの」
posted by andycandy at 01:03 | Comment(5) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月09日

昔のこと4


「へぇ…結婚」
「とてもいい人なの」

お前が幸せなのは結構だが。
それで何故オレに連絡してくるんだ。

「で、それがどうかしたのか」

精一杯の強がりだけが、私を動かしていた。

そう、無関心の仮面を装うことで、平静を保とうと無我夢中で。

「一応、、、報告しとこうと思って」

なぜ、何の為に。
お前の目的は何なんだ。

(おめでとうとでも言ってほしいのか?この馬鹿女がぁ!!)
 とでも言えたらラクなんだが。

「口数少ないね…眠いの?」
「いや別に。特に話すこともないだろ。だいたいこんな夜中に」

「なにムキになってるわけ?もしかして妬いてるの?」
「・・・・・」

「…なんてね。全部嘘。ウソよウソ。仕事辞めたのも結婚も」
「ハァ?」

「まだ私のこと好きなんでしょ」

やけに空気が乾いて仕方ない午前2時。
台所の換気扇だけが、虚しく音を立てていた。

posted by andycandy at 01:45 | Comment(3) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月08日

昔のこと3

「どうしたの?なんで何も言わないの?」

言わないのではない。
言えないのである。

「いや別に・・・」

努めて平静を装う。

「半年ぶりくらい?あ、でもちゃんと話すのってもっとひさびさかなあ」
「そうだっけか」

ちょうど電話があった半年前くらいに、共通の知人の結婚式の2次会で
ニアミスしていたのである。私はすっかり忘れていた、というより
忘れたことにしていた。。。

「最近どうしてるの?」
「特に何も…フツーに社会人やってるよ」

「ふーん。。私さー、会社辞めちゃった」

彼女は某企業の総合職として、バリバリ働いていたはずであった。

「なんでまた。クビにでもなったか」
「ううん。結婚するの」


posted by andycandy at 02:58 | Comment(4) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年09月07日

昔のこと2

深夜2時過ぎの電話。
このタイミングで鳴る電話には、ロクなことがない。

例によって、
今回もその通りだった。

「もしもし」
「あ、、、」

女性の声だ。

「どちら様で・・・」
「覚えてる?私よ」

言葉を失った。
自分の理解の範疇を超えた出来事を目の前にしたとき、
その人の本性が現れるものという。

私の場合は、二の句がつげずに、ただ呆然としていた。

「驚かせちゃった?どうしてるかな、って思って」

相手は、あの女だった。
そう、トラウマの女である。



つづく(かもしれない
posted by andycandy at 14:19 | Comment(5) | TrackBack(0) | あの日のデキゴト

2005年08月19日

昔のこと

帰郷するたびに言われるセリフがある。

「お帰りはおひとりですか?」

一度だけ、「2人で…」とボケたら、
騒然となったことも。

余計なお世話だとも思いつつ、
親戚縁者でも、25歳Overで独り身なのは、
なんとオレだけとなってしまった今日この頃。

盆や正月といった、大量の人員が集まる時期には、
確かに手持ち無沙汰というか、何やらこころもとないのも事実である。

結局毎回、子どもたちのお相手に奔走する羽目になるのだけれども。
おかげさまで、幼児と老人には大人気です。


ま、田舎は婚姻ごとが早め早めではあるのだが、
ちょっと帰省期間を長めにして滞在していると、
なんだか、結婚時期が遅い首都圏の方が異常なのでは…と
洗脳されてくる。

そして今回、昨年結婚の(結婚式では私が友人代表スピーチもした)
最親友におめでたが発覚。
まだ妊娠8ヶ月ながら、すでに名前まで決めている幸せ街道ばく進のご様子。

周囲の幸せっぷりを眺めつつ、素直に祝いたい気持ちは湧いてくるんだが、
自分がそちら側のプレーヤーになろうとはあまり思えてこない。

別に女性が嫌いなわけではない。むしろ大好きであります。
余談だが、以前真剣な顔で
「ずっと男色系なのかと思ってました♪」
と言われたことがある。
いや拙者、ノンケですから!つーかそんなツッコミは期待してませんから!

ただ、躊躇なく問答無用に相手を好きになることには抵抗がある。

トラウマというか何というか。

大学三年の秋、そう、21の秋ですね。そこで体験したことが
未だに尾を引いているんだろうか。

若かった、ただひたすらに若かった、それも紛れもない事実。
されど、それゆえに刻まれた衝撃は、あまりに重かった。


時計をさらに巻き戻すとしよう。



彼女との出会いは、大学一年の夏。

「稲妻に打たれた」

なあんて陳腐な表現が、己の身に降りかかろうとは。


彼女をひと目見た瞬間から、
もうヤラレてたのですな、これが。

たまたま学部が同じで、共通の知人もいたせいで、
そのうち一緒に授業受けたり、ゴハン食べたりが当たり前になっていった。

好きな作家とか、聴く音楽とかもモロかぶりで。
モノゴトの考え方とか、大事にするモノとか、要は価値観的なものが
結構近いのもあって。
一緒にいるだけで楽しくて仕方がなかった。

でも、彼女と一緒にいられるのは、ほんの短時間。
休日のデートなどはあり得なかった。


そう、彼女には素敵なカレがいた。


2つ年上のカレは、スポーツ万能で頭もキレる。
男のオレから見ても、抜群のイケメンだった。

彼女がカレの自慢をするたび、
彼女がカレの不満を口にするたび、

オレは顔だけ笑っていた。
こんなに近くにあっても、決して届かないこの感情。
それでも、自分の好きなコの側にいられるだけで
十分なんだと言い聞かせて。


とはいえ、カレの誕生日プレゼントの相談とかは
発狂しそうになったりもしつつ。

そんなこんなで2年近くの月日が過ぎていった。





その間、オレはオレで何人かのコと付き合ってはみた。
皆いいコで、可愛かったと思う。
でも若すぎたオレは、どうしても彼女とくらべてしまっていた。
知らず知らずのうちに。

そして愛想を尽かされる、というパターンの繰り返し。

もったいない。



「また振られちゃったよー」
と彼女に言うと、
「どうせ高望みすぎるんでしょー」とかいうツッコミをされたり。
オレの望みは…口に出せるはずもなく。

この関係を、側にいられるこの状態を、
壊してしまうことだけはしたくなかった。


そんな大学三年の初夏だった。




「私…カレと別れたの」
「は?」

いくつになっても、アドリブのきかないオレ。

「浮気されちゃった。どうしても許せなかったの」
「な…なんでこんな可愛い彼女がいながら」
「カレは向こうから誘ってきたって言ってるけど、関係ないよね」
「まあな。結果は同じだからな」

これほど、さみしそうな、哀しそうな彼女を見るのは初めてだった。
でも、、、そんな彼女さえも綺麗だと思ってしまうオレがいた。

「ま、男は星の数ほどいるから、元気だしなよ」
「ふふ。ありがと。キミが私のカレだったらよかったのにね」

             キター
             キター
             キター

「はは。心にもないこというんじゃねーよ」

内心はガクガクブルブルだった
彼女の心に空いてしまった穴が言わせたセリフだったしても、
オレにとってはヘビー級の右ストレートだった

「冗談なんかじゃ、、、ないんだけどな」

非常事態発生です、姐さん!
もう当方の処理能力では対処しきれません!
至急応答願います!

なんだこの展開は。
昼ドラかこれは。

ホントにいっぱいいっぱいな状況に、オレは笑って誤魔化すしか
為す術がなかったのだった。

その場は黙って別れた。

「ずっと前から、会ったときから好きだった」
とでも言えばよかったのか。
彼女だって、別れたショックから冷静さを欠いていたに違いない。
あそこで無理に急展開させたとして、
今の関係をぶち壊すのだけはなんとしても避けたかった。

しばらく、考える日々が続いた。
長く一緒に居すぎたせいで、
今さら告白なんぞ、できそうもない。


オレは手紙を書いた。
分量にしたらそう、原稿用紙4,5枚になるんじゃなかろうかと
いう物凄い長さ。
自分の彼女に対するこれまでの思いをただひたすらに書き連ねたものだった。

さてこれをどうするか。
思い余ったオレは、なんと彼女に渡してしまう。

「ちょっとコレ読んで」
「なんなの改まって」
「いいからいいから」
「ちょっ…えっ…」

無言で手紙に目を落とす彼女。
時間がひどくゆっくり流れてる気がした。

「なんとなく分かってた」
「へ?」
「とっても嬉しい」
「そう」

「次の日曜日、どこ行く?」
それが彼女のOKサインだった。


夢にまで見た光景が、オレの前に広がっていた。
ずっと好きだった女性が、
オレだけを見ている。
信じられなかった。

だが、それは確かに、信じてはいけない日々だったのである。


付き合いだしてから3ヶ月、ある噂を耳にすることになる。

「お前の彼女さあ、別の男と歩いてたぜ」
「見間違いじゃねーの」
「彼女の女友達も見た、って言ってたぜ」
「歩いてただけじゃ、別にどうってことないだろ」
「手ェつないでた、って話だぞ」

そんなはずがない。
元カレの浮気に泣いた、
彼女に限ってそんなことだけは絶対に。


「こないだの休みさぁ、何してた?」
「ずっと家にいたけど」

アリバイチェックをしてしまう自分に嫌気がさしたが、
彼女の疑惑が晴れるなら、ただそれだけを念じていた。

「●●にいたって話だけど」
「えーっと、あ、そうそう、その日はそうだったね」

一度綻んだ信頼という絆は、
元に戻そうともがけばもがくほど、
さらに綻びを増していく。


そして滅びの日はやってきた。


すべては幻だった。
まず、彼女には男が3人いた。

オレはそのうちの一人にすぎなかったのだ。

さらに。
元カレとの別れた原因は、
彼女の側にあったのだった。

そう、彼女の浮気がカレにばれたのだった。


自分が2年と少しの間、彼女だと信じていたものは、
とんだまがい物だったのだ。

でも、どうして。。。


どうしても信じることができず、
彼女に問いただす。


「どういう…ことなんだよ」
「もう分かってるんでしょ」
「嘘…だろ」
「バッカじゃないの。おめでたい男ね」

今まで見たこともないような形相の彼女がそこにはいた。

「私が運命の女だとでも思ったワケ?」
「・・・・・・・」
「あの長い手紙、キモかったわぁ」
「・・・・・・・」
「ま、アンタのおかげで●●くんと仲良くなれたからよかったけど」

もう何も聞きたく、なかった。



女を見る目がなかったのだと人は言う。
オレが若すぎたのだと人は言う。

思い出はいつだって残酷だ。
否応なく、人を過去へと引き戻す。
二度と変えることも、取り戻すことも
できはしないというのに。


オレは怖いんだろう。
感情を預けた相手に裏切られることが。
思いの矛先を失ってしまうことが。


とか何とか言いつつも、すべては親への言い訳ということで。
posted by andycandy at 02:00 | Comment(10) | TrackBack(2) | あの日のデキゴト
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